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2014年02月19日

2012年9月投稿論文、実践報告「ナラティヴ・アプローチによるアトピー患者の心的外傷への接近」  治療後の方にもぜひ読んでいただきたい。



ファミリー・チャイルド・セラピー第6号2012年9月  
論文 実践報告「ナラティヴ・アプローチによるアトピー患者の心的外傷への接近」

・・・アトピー患者は、医者の言うことを聞かないで勝手にステロイドを止めて、ひどくなっている。それは患者の落ち度である。という医療者の説明モデルに、30年来憤りを感じていたが、それをどのようにして、伝えれば良いかわからずにいた。

「アトピーの方は、心理的にへんだ、性格がわるい、医者の言うことを聞かない、きちがいだ」、心理的要因で発症しているのだと言われていることに怒りを感じていた。そして、私は、患者さんからもアメリカの手先、詐欺師、偽善者、他人の苦労につけこむ悪徳業者と言われ続けた。

一般的に構成されているドミナントなストーリー(支配的な物語、文脈)「アトピーとは、大した病気ではなく、ステロイド軟膏をつけて、成人になれば自然になおる」「リバウンドとはありえない」に支配されている社会的文脈はぶあつく、抗い難く、自分一人が、変わり者として逆風の中で生きてきた。

よし、それでは、私自身、心理臨床の道を歩んでみようじゃないか!私のこころはおかしいのかどうなのか検証してみようじゃないか!と大学院の門を叩いた。アカデミックに議論を持ち込む準備をしてみようと思った。

アメリカで高度な医療を受ける前の患者さんの心理検査データと治療1年後のデータを比較してみようじゃないか。アトピー症状がなくなった時、彼ら彼女らはどのような心理的傾向になるのか検証してみようじゃないか!

医療者の説明モデルの元で、この軟膏で様子をみて、と症状が改善しないままに生きていかざるを得ない人々の心理的傾向は、高度なアメリカの医療で症状がなおったらどう変化するのだろうか?また、変化するとしたら、アトピーを治せない標準医療に重大な問題があるのではないだろうか?また、その苦闘とは、どのような心的外傷なのだろうか?検証してみようじゃないか」

3年かかったが、それらの思いで書いた。

2人の被験者に心から感謝を申し上げたい。

考 察(抜粋)

本稿では、被験者2名の身体治療前と治療開始1年後のロ・テスト及びナラティブを抽出し、AD患者の心的外傷とはどのようなものなのかを複合型PTSDのカテゴリーを軸に検討した。
 その結果、医療者側の説明モデルと患者の実態には深く大きなずれが存在し、患者に不利益をもたらしていたことが示された。それらはDSM−WTR 2)におけるPTSDの診断基準におさまるものではなく、ハードウエア(AD身体症状)への適切な治療機会を失ったことに関連する、身体症状の難治化とそれに伴う社会日常生活への支障が、時間と共に心理的ダメージとして蓄積した心的外傷体験であり、複合型PTSDのカテゴリーに該当すると仮説が導き出された。心的外傷には、なんらかの形で免疫機能の低下を起こし身体症状の発症または悪化を引き起こす可能性があるが17)、両被験者には、標準的な治療を中断以降、改善への連続的な失敗に伴い心身間に悪循環サイクルが起こっていたと示唆される。
本文をお読みいただいてご感想などをいただけると救いになります。感謝。

posted by AA-J at 13:56| 「続・1%の奇跡」